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■プラぷら
【Event】
・オラザクに挑戦! New!
・第一回 看板娘
【Novel】
・第一話 第十二節 New!
・第一話 第十一節
・第一話 第十節
・第一話 第九節
・第一話 第八節
・第一話 第七節
・第一話 第六節
・第一話 第五節
・第一話 第四節
・第一話 第三節
・第一話 第二節
・第一話 第一節
【Other】

 

NAL Factory
■「剣を召しませ」
 ニコニコ動画のコミュニティ「プラぷら」のマスコットガールを主人公にした物語がここに始まる。

 細身の剣を携えた隻腕の少女、プララ。
 港町として栄える『グラナラード』で傭兵としての手続きを済ませた彼女は、傭兵局を後にしてやや賑やかな街の一角へと足を向けた。
 どこの街とも変わりのないその街並みの中、プララは一人の男と出合った。
■第一話 第二節
 高い塀に阻まれ、山は見えなかった。
 街を往来する人々は一向にそれを気にするでもなく、ある者は気忙しく往き、ある者は無気力に澱んでいた。ここグラナラードは古くから港町として栄えていた。街の西にある海は滅多に荒れることはなく、東の山岳地帯は山の恵みを人々にもたらすと共に、大軍の進行を阻む城壁の役割も果たし、流れる川が肥沃な土地を約束していた。その恵まれた土地は人々の羨望の的であったが、流通の要として機能してきた経済的事情と、豊かな土地に育まれた文化、そして活気ある街は工業の発展をも促し、必然的に占領の対象ではなく従属の対象となっていた。グラナラードもまた、その地位に胡坐をかくことなく己が責務を真っ当してきたことで、近隣諸国の友好的な感情を裏切らずにいた。
 グラナラードをぐるりと取り囲む防壁は、その責務を果たす上でも必要な処置であった。
 瘴気に侵された獣は昼夜を問わず人を襲い、その恐怖から身を守るためには進入を阻む以外に手はなかった。人の背丈の十倍はあろうかという石の壁が一部の隙もなく街を取り囲み、人々の出入りする門はもちろん、排水溝にすら格子が張られ、いかなる侵入者をも拒んでいる。それでもいかに高く厚い壁とて空からの襲撃には無力であり、街は壁の上端要所にやぐらを組み、そこに正規軍による弓兵を置いて常時空への警戒を行っていた。
 それでも招かれざる客はやって来る。特に小さな客が。

 傭兵局を出たプララは、そこからやや賑やかな通りへと足を向けた。程なく酒保や携帯食料を扱う店、武具に防具など、先ほどの役人が言うところの『屈強な男たち』を相手にした商店が所狭しと立ち並び、その街並みに似つかわしくない若い少女であるプララを男たちは特に気を留めるでもなく商品を手に取り品定めをしていた。
 「どこも変わらないな……」プララがそう感じた矢先、悲鳴と共に一人の少女が路地裏から飛び出して来た。
 少女と言っても十歳にも満たない子供である。手には一つ、大きめのパンが抱えられていた。何事かとプララが目を向けた先にはこちらへ逃げてくる少女と、その少女を追うように走ってくる一匹の、背にいくつもの醜い瘤をつけたネズミの姿が目に入った。
 街を取り囲むように張り巡らされた壁があるとは言え、ネズミのような小さな侵入者までは完全に防ぐことは難しく、時にはこのように街に入り込み、人を襲うことがあった。瘴気によって人が侵されることはない。また、獣であっても必ずしも瘴気に侵されるというわけではなく、瘴気はあたかも磁力のように強く働く場所と弱い場所があり、瘴気に侵された獣が多く分布する地帯もあれば、ほとんど影響を受けない地域もあった。その法則を解明しようと学者連中が躍起になっているらしいのだが、その一部でも解明されたという話を耳にしたことはなかった。
 泣き叫ぶように少女が脇を走り過ぎ、ネズミが足元に差し掛かった時、プララはブーツの高く鋭利なヒールの先でそのネズミを踏み潰した。
 ギーッという声を上げ、ネズミは絶命した。
 瘴気に侵された獣であれ所詮はネズミ、特に怖い相手ではない。しかし、逆にネズミであっても、あのような小さな体の子供がまともに噛まれでもしようものなら、三日三晩は熱にうなされ、運が悪ければ命を落とす。プララ自身、幼少の時期に幾度となく死線を彷徨った経験があった。
 自分が踏み潰したネズミに視線を落としていた時、不意にドンと背中を突く衝撃があった。
 先ほどの少女が自分を突き飛ばしたかと思うと、おもむろにそのネズミに手を伸ばし、それを鷲掴みにして走り去っていった。呆気に取られたプララは少女の後姿を見つめることしか出来なかった。
 「傭兵局へ持っていくのですよ」
 突然すぐ背後から発せられた声に驚き、彼女は咄嗟に身を翻した。
 「おおっと!驚かせてしまったようで申し訳ありません」両の掌を胸の前で開き、男は大げさなポーズで言った。灰色がかったプラチナシルバーを後ろに撫でつけた髪、背は高く痩せた体躯に白いローブを羽織り、一見して僧侶系であることが見て取れた。その表情は柔らかく、穏やかでありながら高い知性も感じさせる。やや尖ったアゴが神経質な性格を思わせた。
 「あの子はね、あれでも傭兵なんですよ」少女が走り去った方向へ目を向けながら、その男は言った。
 「傭兵?」
 プララは男の横顔を睨みつけるように見据えながら言った。すぐ背後を取られ気付けなかったことが気に入らなかったのだ。もっとも、その怒りが自身にではなく彼に向けられていることは理不尽でしかない。
 「傭兵の手続きは無料だったでしょう?広く門戸をということで無料にしてあるわけです。まぁ書類一枚だけの話ですし、行政も損する訳じゃありません。つまり誰でもなれるわけです」
 男はプララの足元のネズミの血の跡に目を移して続けた。
 「むろん、彼女が外へ出て獣を退治するわけではありません。ほとんど金にならないような、ああいうネズミを拾っては売りに走るわけです。傭兵でなければ買い取って貰えませんから……」
 そう言うと男はプララの目を見てニコリと笑った。
 「ま、どこの街でも同じようなものですから、説明するまでもないでしょうけどね」
 どうにも胡散臭い男だとプララは思った。背後を取られたことも不本意であったが、訳知り顔で丁寧に説明してくる男の態度にも好感が持てなかった。それに……。
 「今、『無料だったでしょう?』と言ったな?なぜ私が傭兵手続きを済ませたばかりだと知っている?」
 プララは素直に疑問をぶつけた。
 男はクスリと笑い「申し送れました。私、ナグラスと申します」と言って頭を下げ、「ご覧の通り、僧侶系の傭兵です」と自己紹介をした。
 プララは返事することもなく、じっとナグラスと名乗る男を見据えていた。
 「ご存知のことと思いますが、私のような僧侶系は命を持たないアンデッド系ならともかく、基本的には前衛のサポートが主です。つまり人と組まないとやっていけない訳でして、私もパーティを作っています。まぁ早い話優れた人材は重要な訳で、傭兵受付の出入りは常にチェックしているのですよ」
 ナグラスは演技がかった身振りをしながら説明した。
 「失礼ながら、先ほどの傭兵受付での一幕は拝見しておりました。素晴らしい身のこなしです。ぜひ我々とご一緒して頂きたいと思いまして」
 そこまで話を聞いていたプララはクルリと身を返し、歩き出した。
 「あらら、ダメですか?」ナグラスはプララの背後に声をかけた。
 「悪いが獣退治に興味はない」プララは追いすがるように後ろを歩くナグラスに言い放った。
 「おや、獣退治に興味がない?でも傭兵手続きはなさったでしょう?」
 ナグラスの問いかけにプララは答えず、スタスタと歩き去った。
 「気が変わったら声をかけて下さい。いつもこの辺りをウロウロしてますので」立ち止まり投げかけてくるナグラスの声を、プララは背中で跳ね返した。
 「気に入らないね」
 いつの間にかナグラスの横に立っていた女が呟くように言った。
 「ふむ、振られちゃいましたね。まぁまたチャンスもあるでしょう」プララの歩き去る背中に視線を向けたまま、ナグラスは笑みを浮かべて言った。
 「前衛だろ?ロボスがいるじゃないか」
 「ヤツは頭が悪い」
 そう言い放ったナグラスの横顔に笑みはもう残っていなかった。
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