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■プラぷら
【Event】
・オラザクに挑戦! New!
・第一回 看板娘
【Novel】
・第一話 第十二節 New!
・第一話 第十一節
・第一話 第十節
・第一話 第九節
・第一話 第八節
・第一話 第七節
・第一話 第六節
・第一話 第五節
・第一話 第四節
・第一話 第三節
・第一話 第二節
・第一話 第一節
【Other】

 

NAL Factory
■「剣を召しませ」
 ニコニコ動画のコミュニティ「プラぷら」のマスコットガールを主人公にした物語がここに始まる。

 港町『グラナラード』の傭兵局・傭兵受付事務室に一人の少女が現れた。
 低くはないが決して高くはない身長に、ぴったりと薄くフィットした惜しげもなく彼女のボディラインを描き出す衣装を身に纏い、背には細く長い剣を一本携えた彼女は隻腕だった。
■第一話 第一節
 「そこに名前を書いてくれ」
 痩身の男が面倒臭そうに机の上の書類を指差しながらそう言った。
 くすんだ煉瓦色の服に身を包み、不機嫌なのか本当に面倒臭いのか、彼の面白くなさそうなその態度はいかにも不良役人的であるが、若い男がこんな受付業務をやらされていたのでは仕方のないことなのかもしれない。もっとも、平穏な時代ならいざ知らず、野には魔物が溢れ街では物盗りが日常となっているこの混乱のご時世、どこも人手不足であるにも関わらず若い男がこのような仕事に回されているところを見るとさして有能な人物ではないのだろう。書類に名前を書かせて受け取るだけ、年寄りでも出来る仕事である。
 「え〜っと、戦士志望かい?」署名し終えた書類を手に取り、その役人が尋ねた。
 少女は黙ってこくりと頷いた。
 「ふむ……。まぁアンタも戦士になろうってんだから知っているとは思うが、街から一歩表に出れば、例え犬や猫、ウサギだって襲い掛かってくる。そう、ドミールの瘴気ってヤツだ」
 少女は男の言葉を聞いているのか、身じろぎもせずに立ったまま、目の前の机に力のない視線を落としていた。
 「もちろん、例えネズミ一匹でも瘴気にやられたものを持ち帰れば金は払う。しかしそんなのは端金だ。アンタみたいな痩せっぽちでも飯代にもならないだろうな。ここで食っていこうと思うなら最低でもコボルドクラスをコンスタントに倒せるようでなければ話にならない」
 男はそこまで話すと初めて書類から目を離し、机の向こうに立つ少女に目をやった。正確には少女の左腕……があるはずの空間に視線を向けた。
 「知ってるかい?ここ傭兵志願受付には毎日のように何人もの屈強な男たちがやってくる。アンタの三倍も太い腕を持った男たちが先週だけでも30人は来たかな……。今週、その内29人の死亡届けが俺のところに届いているんだよ」
 ここまで話したところで暫く間を空け、少女の反応を待った。しかし少女が机に力ない視線を落としたままなのを見届けると、一つため息を落とし口を開いた。
 「なぁアンタ、その左腕どうした?言いたくないなら言わなくても良いがね。何にやられたのか知らないが、そんなんでやっていけるんかねぇ……」
 短くカットされた黒髪、低くはないが決して高くはない身長、均整の取れた躍動感のある下半身に対し、酷く痩せたように見える上半身というバランスは奇異なほどであったが、何よりも彼女が人目を奪うのは左腕であった。ぴったりとフィットした薄い衣装は惜しげもなく彼女のボディラインを描き出し、右腕と両足は付け根からむき出しであるものの、胸から左腕にかけては薄いブラウスのような素材で覆い隠されていた。その柔らかく軽い素材で出来た袖に目をやれば、彼女の左腕が肩と肘の丁度中間の辺りで終わっているのが見て取れた。決して恵まれたとは言い難い体格に加えての隻腕、戦いに向いているとは役人には到底思えなかった。
 役人は悪い男ではなかった。ただ毎日毎日自称最強の男を見送り、早い時には翌日にはその男の死亡届けを処理し続けてきた彼には、言いようのないジレンマを感じていた。
 街の外は、瘴気によってありとあらゆる生き物が魔性の獣と化し人に襲いかかる。この付近では最も大きな街である『グラナラード』であるが、それでもそれ単独で経済・流通が成り立つはずもなく、他の街や村との交易は必要であり、流通経路の安全を確保することは必須であった。役人として決して無能ではない彼はそれを十分に理解していたし、だからこそ街の安全を確保するためと考え、傭兵局の管理官という職を自ら志望した。しかし自分が送り出した屈強な男たちが次々と死亡届けという薄っぺらな紙一枚となって自分の下へ戻ってくる。傭兵の生存率は実に5%を下回っていた。
 いくら待っても返事をする様子を見せない少女に肩をすくめ「分かったよ」と書類に判を押した。
 「プララ……か。随分と可愛らしい少女趣味な名前じゃないか」
 役人の男が書類に書かれた署名を見ながら呟いた時、カタンという床を叩く乾いた音が聞こえたと同時に、目の前の書類に一本の頭髪が落ちた。
 顔を上げた男の目に、細身の軽く湾曲した長い剣を横に振り抜いた少女の姿が映った。
 「父が私に与えた名だ」
 男は初めて少女の声を耳にした。
 いや初めて聞いた少女の声などどうでも良かった。目の前の書類に落ちた一本の頭髪は間違いなく彼女の手にした剣によって切られた自分の前髪であろうが、その剣を振り抜いた姿を目の当たりにしてもなお少女が剣を振ったと信じることが出来なかった。
 自分の額に僅かに浮く前髪に切っ先を通され、自分は気付けなかったのだ。「ありえない」と彼は思った。
 「悪かった。侮辱するつもりはなかったが、言葉が過ぎた。そして、君の腕を疑ったことについても謝罪しょう」
 役人はそう言うと立ち上がり、頭を深く下げた。
 彼が頭を上げた時、再び目の前の少女、プララに驚かされることとなった。
 プララは首からの一本の皮ベルトと、両方の太ももから一本ずつの皮ベルトの計三本によって背中に剣を装備していた。その内の一本、首からの皮ベルトが外され、鞘の先が床へと落ちていた。先ほどのカタンという音の原因はこれだろう。先端が落ちた鞘はその反対側を両の足の間から鎌首を持ち上げ、そこに剣が収まっていたであろう細い穴が見えていた。
 プララは自らの剣を再びその鞘へ収めると、右足で剣の柄の部分を押し下げるようにして鞘の後方を持ち上げ、それを彼女の唯一の腕である右手で受けて首の皮ベルトで再びつなぎ止めた。
 「器用だな」思わず男は言葉を口にしたが、つまらないことを言ったと後悔した。
 「手続きはこれで終わりだ。これで君は正式にグラナラードの傭兵として認められる。魔物を倒したらいつでも持ってきてくれ」と男は事務的に告げた。
 プララは相変わらず机に視線を落としたまま、コクリと頷いた。
 ついっと音もなく身体を回転させ立ち去ろうとするプララに男は声をかけた。
 「ずっと机に視線を落としたままの君の姿を見て気になったんだけどさ、アンタこの街は始めてかい?」
 立ち止まったプララが肩越しに男を見返した。
 「いや、いい。それよりも、ほら」男は机の上に置いてあった小さな皮袋をプララに投げ渡した。
 「治療薬と毒消しだ。まぁ駆け出し傭兵さん向けのセットといったところかな」
 プララは皮袋の上から感触で中身を確かめた。
 「大した量ではない。ま、既に持っているだろうけど、そういうのはいくつあっても困ることはないからな」
 男は初めて笑顔を見せた。
 少女はそれを見届けると黙って頷いて、腰に備えたポーチへ皮袋をしまい込んだ。そして音もなく再び歩き始め部屋の扉の向こうへと姿を消した。
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